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2015年7月

さらば南の島

石垣島には、潮流を変える神様がいると聞いていたが、今思えば、確かに旅人だった15年前、石垣島にたどり着いて、わたしの人生は変わってしまった。

あの頃は、まさか自分が東京という地面に絡め取られてしまうとは思いもしない、横浜ナンバーのバイク乗りだった。あのとき出会った人々の影響は大きい。

いま歌っている自分の曲も、あの頃に続々と生まれたものだ。

あんなにも北海道に魅せられていたのに、あっさりと南の島に乗り換えてしまって、移住したいとすら思っていた。

わたしは今だって、いつも次の移住先を探している。もしかして、そろそろ、やっぱり、石垣に何か縁があるんじゃないかと、でもあんな遠いところにまさかね、と確かめに行ったようなものだ。

真夏の南の島。

はい、わたくし舐めておりました。自分が、夏が好きだなんて勘違いしてました。

今や、夏はシャーベット状の猫、略してシャべ猫と自認するわたしである。

着いてすぐにレンタカーで懐かしの米原ビーチへ。青い海と白い砂、そして悲しい伝説の、失った恋人を探し海を覗き込むようにそびえる、野底マーペーもあの頃のまま。珊瑚のかけら、美しい貝に潜り込んでるヤドカリも愛らしく。

IMG_4672.jpg IMG_4671.jpg IMG_4755.jpg

それなのに、暑くて暑くて、全然テンション上がらないっす。水陸両用のおニューの靴に、砂が入り込むのも不快。ああ、もう!思い出に浸る間もなく、すぐ退散。

まだまだ明るい夕刻の川平湾から、於茂登岳に向かい、ふたたび石垣島に来られたことの感謝の祈りをささげる。

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市街地の小粋なゲストハウスにチェックインし、IMG_4746.jpg

街の居酒屋でオリオンビールと島料理を。連休前の金曜日は、街も盛況のようだった。

IMG_4673 (1).jpgアダンの炒め物。まるで筍。IMG_4675.jpgミミガーイリチー。

冷房は全く好きじゃないはずのわたしが、3時間100円のコイン式クーラーをフル活用して安眠を貪り、翌日は離島ターミナルから10時30分発の波照間行きフェリーに。

東京から被って行ったチャラいハットは、南の島では全く役に立たないことを悟り、相当悩んだ挙句、離島ターミナルにて農家のおばちゃん帽子(前半分麦わら、後ろ半分は布で、顎で結ぶ)を800円で購入。(どれもこれもダサかったのだが、東京に持ち帰っても使えそうなのがこれだけだった。夏の農作業はこれで完璧)

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以前、竹富島、小浜島、西表島へは渡ったことがあるが、波照間に渡るのは初めて。

八重山諸島最大の西表島を横目に、高速船は波を切って走る。一番前しか席が空いていなかったから、外洋に出ると、めちゃくちゃ揺れる。ジェットコースターに乗り続けているかのようなスリルの連続で、途中、船員さんが黄色いビニール袋を配り始めた。

すべて配り終えて戻ってきて、しばらくすると、ビニールのお代わりを所望する人もいたほどだが、わたしは無事だった。

船が着くと、島中の民宿の車が勢ぞろいして客を待っていた。

自分の泊まる宿の車はなく、しばらく困っていたが、「遅くなりました」とお兄さんのお迎えが。

おばあ一人でやっている宿と聞いていたのだが、説明を聞いていると、やはり一介の客だという。ほぼ常連が運営しているという口コミどおりのようだった。

唐沢寿明と中居正広を足して5歳老けさせたような仕切り屋さんの話によると、夕陽も天体観測ツアーも、天気が崩れるので今日しか無理、食事をするところも限られているので、予約が必要ということで、タイトなスケジュールを強いられることに。

お昼に波照間に着いて、自転車を借りたが、数少ない食堂は軒並み休みで、お昼を食べられるところもない。連休の初日というのに、島のヒト、働かなさすぎダロ、と軽く怒りつつ、持参したナッツやチーズでお腹を誤魔化し、ニシ浜でシュノーケリング。

ニシ浜は、アジアでも三本指に入るとかの美しい海ということで、そりゃもう、どこぞの国が絵の具を流して景観を保っているかのような、恐ろしいほどの青だった。

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しかし、わたしはわかったの。八重山のすべての素晴らしいビュースポットにわたしが萌えないわけを。

やはり、どれもこれも、たくさんの観光客の手垢がついた風景なのだ。景色に罪はないのだけれども、わたしが愛でたりする隙間もないくらいに、多くの人に晒されすぎている。みんながはしゃぎすぎている。

思いの外長い時間を海で泳ぎ、背中を灼いてしまった。遠浅のぬるい海の中では、珊瑚の隙間に、色とりどりの魚が泳いでいた。すべては想像通りだ。なんてつまらない脳回路になってしまったんだ。

波照間島の水は、海水を真水に変えていて、かなりコストがかかっているそうだ。そんなありがたい水のシャワーでさっぱりして、炎天下の中自転車を漕ぎ、最南端の碑を目指す。

波照間は延々とサトウキビ畑ばかりで、日陰というものはほとんどない。そこかしこの畑に繋がれているヤギも可哀想だ。

太陽と暑さを呪いながら、南の島はもう無理、わたしが悪うございましたとヤケッパチでペダルを漕ぐ。せめて電動機付き自転車にすればよかったと。

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しかし、あのレンタサイクル屋は相当儲かるんだろうな、と、お客の数を思い出してお爺の年収を計る。バイクも相当数所有していたし。すれ違う車すらない道を、誰ともしゃべらず走るとき、わたしの頭の中は相当自由だ。

集落の商店でオリオンビールを買い込み、宿に戻る。シャワーを浴びて、ゆんたくスペースで、ほかの旅の方々とビールで交流。誰かのウクレレに合わせて、わたしもオカリナトロンボーンでスターダストなど吹いてみる。しかしこの旅、全然笛の出番なかったぞ。

マニアックな宿だから、マニアックなお客が集まる。

わずかな会話で、わたしは彼らの群像劇を小説にすることができるほどに。いつか書いてみたいものだ。

宿の10数人で、島に一軒しかない居酒屋を占拠。慌てて食事を摂って、先においとまし、夕日に急ぐ。けれども、太陽は雲の中に消えた。

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つづく

 

 

 

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