名古屋レポート

校舎に響いて、遠くに聞こえる無邪気な嬌声で気が遠くなる。
どこにぶつければ良いのか、名付けようのないパワー。
わたし、あの頃、なにしていたっけ。

行く前から覚悟はしていたのだ。最近、身のまわりに名古屋出身の人が多 い。
わたしの頃にはなかったルーズソックス、短すぎるスカート。
相方のギタリスト、まなびーは明らかに目のやり場に困っていた。
控え室に案内してくれる女の子たちは、先に階段を昇り、とても自然に下 着が見えないよう、スカートに手をあてる。そこには媚もなく、羞恥もな い。その短さは、彼女たちの世界では当然で自然なものなのだ。

時代が若人を育てるんでしょ。
大人は嘆くばかりで、人の心に本当に触れようとなんかしない。 そんなの昔からかな。
真実はバーチャルによって再現できる。それだけ進んだのだ、バーチャル な世界が。大人たちの様々な研究と努力によって。
彼女たちの制服は制服なんかじゃなくて、衣装だ。
学生時代にしかできない、大切な衣装。

リハーサルの後、すぐに開演のブザーが鳴った。暗幕の内側にいると、開 場と同時に席を取るために走る生徒たちの足音。約400席ある椅子がど のくらい埋まっていたかなんて、ライトの当たるこっちは知らない。拍手 の音だって、実際の耳には聞こえない。
なにが伝わるのかもわからないままで、歌う。
「なぜに生まれてきたのかを考えよ」という作文を、読むは読むけれども 。
集団心理をヒトラーあたりに学んでどうかすれば、どうかできるのかもね 。弾けたそうにしていても弾けさせてあげないことによって、集団心理を 考えさせられたわたしたち。

名付けようのないパワー。
ステージから下りたわたしたちに、大声で叫ぶ女子高生。
「おつかれさまでーす!喉乾いたでしょ!アイスクリームどうですかっ、 やっすいよー!」
戦後のすさんだ時代だって、女性が市場を支えた。
奇跡の1マイルと呼ばれた、現在の沖縄・国際通りだって、日本を含むど こかのアジアの市場だって、そんなふうな女性の声であふれていたはず。

あの頃の気持ち、わたしはまったく変わってない。学校で用意された「良 いもの」なんて、信用してなかった。それでも、仕方なく臨んで心に響い たものは、本物だったんだ。太宰治や芥川龍之介の短編・・・
わたしの歌は届いたんだろうか?

わたしたちを招いてくれた先生は、生徒からは人気のようで、
「今日も二日酔いなんだってー?」
だなんて、バレてる。
先生の家の愛らしい犬たちをからかいながら、明け方まで飲んだくれたの は事実なものだから。
睡眠時間が少なくても、病み上がりでもなんでも歌いますよ。
いまのわたしの仕事はコレなんですから。

「名古屋にいたら食っていけそうですねー」
女子高生とキャバクラ嬢の定義が曖昧になりそうな相方まなびーが言った 。
いやー、あなたはすってんてんでしょ。チップあげそうだったじゃないの 。

夜、もう一つのライブ会場、「ペリカンピーツ」で、プライベートモード に入った先生は放心していた。
ありがとう、また呼んでください。