出会いを決して無駄にしないと決めたのだ。「行く」ことと「行かない」ことの決断をするとき「行った」ことによって起こる無限の出来事に対し、「行かなかった」ことによって起きることはたかが知れているような気がする。だから常に「行く」「行かない」では、「行く」を選ぶ。
わたしはいつも安住の地を求めて旅をした。時間は無限にあった。わたしは住み良い場所を探す旅に出ていたのだ。家財道具一式をバイクにくくりつけ、流れた。北海道からだったのは、北海道がバイク乗りの憧れの地であるから。
わたしは心地よい場所を見つけるとしばらくそこにいた。心に響く情報がやって来るまでじっとていた。「どこそこのキャンプ場はいいらしい」とか、「あの祭りは参加すべきだ」とか。わたしはビリヤードをイメージした旅を展開した。なにか情報が来たら、心に聞く。「この情報は聞くべきか否か。」
出会いを無駄にしないと決めてからのわたしは、行く先々で然るべき出会いと出来事を経験し、それは日々の日常でも同じことなのだと悟った。無期限で旅をしようと思ったけど、3ヶ月で帰り、今は東京という土地を旅をしている。
渋谷から銀座線に乗って、終点近くまで行くのに約30分。その間わたしはウイスキーカタログを一心に眺めていた。上野駅で大勢の乗客が一気に降りて行く。突然声を掛けられる。
「大阪にいたことない?」
紳士的な中年のビジネスマン。
「いえ、ないです」
驚いて答える。
「そう、ごめんね。・・・連絡、くれないよね」
彼にとって大事な人に、わたしは余程似ていたのだろう。彼はそこで降りなくてはならず、発車のベルが鳴っていた。わたしは名刺か携帯をバッグから取り出そうとするけど間に合いそうにない。彼はドアの外から「降りて」と手招きするけど、わたしは迷いつつ立ち上がらなかった。ドアは
閉まり、発車した。
わたしは、ものすごく後悔した。こんなことって滅多にあることじゃない。わたしはなんだか大きな魚を逃したような後悔に苛まれた。「行く」「行かない」で、初めて「行かない」ことを選択したことの結果。わたしは今後も「行く」ことを選択し続けようと心に誓った。こんなふうに後悔するなら。それを再認識させてくれる出来事であった。
スピリチュアルな友達はいつだって、「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい」と言う。わたしもそう思う。まずはその波に乗ること。乗らなきゃ始まらない。