タケルの、わたしの腕を押さえつけて自由を奪い、わたしにキスをする
やり方が好き。軽く抵抗すると、絶対にかなわないような力で押さえつけ
られる。そういう強さにわたしは欲情する。
けれど、タケルの愛撫はやさしい。まるでベルベットをなでるような仕
草で、わたしをなでる。小鳥のついばみのようなキス。肩からウエストに
降りて来るころには、わたしのため息にはもう色がついている。いつまで
もそうしていてほしい。核心をつくような、鋭すぎる快感を発する器官に
タケルの指がたどつくと、わたしは残念な気持ちになってしまう。肉欲的
な快楽に堕ちなければならないことに。そう、タケルはわたしの体だけで
はなく、心を愛撫するのがうまいのだ。
タケルは足や手を使ってわたしの脚をひろげたまま固定し、それにあら
がうわたしは、いつだってすぐに負けを認める。つたなさの残るタケルの
指使いは、それでも充分にわたしを満たした。我慢できないふりをしてタ
ケルを求める。タケルの全身にキスの雨を降らす。
タケルのを口に頬ばるのがとても好き。つるんとした、やわらかくて慎
重に扱わなければならないところもひとつずつ食べてしまう。もっと食べ
ていたいのに、タケルはそうさせてくれない。わたしの目をじっと見つめ
ながら、わたしの腰を荒々しく抱き、わたしの中に侵入してくる。やさし
さに包まれた鋭い目線がとても好き。タケルは目をそらさない。わたしは
閉じかけのまぶたのその先で、タケルの視線を感じている。目でも犯され
ている自分を感じている。
タケルはわたしの両手を押さえつけるから、彼を抱きしめることも許さ
れない。
「気持ちいいって言って」
タケルが耳元にそう命令するから、わたしは素直に従う。
「もっとほしいって言って」
加速する快楽の中でタケルは言い、わたしはその通りにする。がむしゃ
らな彼の表情。今が春だということをうれしく思う。肌を合わせるのにち
ょうどいい季節。彼の額には、あの夏のときのような汗は浮いていない。
それを確認すると、わたしの頬はゆるむ。いとしい人。
タケルがわたしの名前を呼ぶ。それは何度も。わたしは呼応する。それ
は激しく。突然引き抜かれると、わたしの腰は行き場を失ってせつないけ
れども、わたしの臍の穴を満たす液体がなんとも愛おしい。指で触れよう
とすると、タケルはやめなさいと叱る。
わたしたちのベッドはいつも愛に満ちていて、そこらじゅうにキスがあ
った。たくさんのキスはいつしかまた熱を帯びて、わたしたちは何度でも
抱き合う。永遠をその瞬間にだけ感じることができる。
「じゃあね」
玄関で、わたしたちは幸福なキスを交わす。微笑みが充満したわたしの
部屋のエントランス。
「またね」
約束を決してしないわたしたちは、小さな切なさとともに、一期一会を
演じる。少しの悲しみが、いつも別れ際にある。その痛みを愛さなければ
、わたしたちは続いて行かないのを、二人は知っている。
さようなら。
あれからタケルはどこへ行ったのだろう?キスのない生活が続いている
。